需要編 ① 2026.07.27

「また同じ説明をした」――AIの“忘れる”に、世界中が悩んでいた

AIが前回の会話をすっかり忘れている。日々の小さな不便に見えるこの問題は、実は個人のものではなかった。利用者が最も不満を感じている点と、開発の現場で交わされる声を調べると、ひとつの共通項が浮かび上がる。需要編・第1回は「“忘れる”は、誰の悩みなのか」を追う。

※本記事中の数値・引用は、末尾の出典の公開情報に基づきます。個人情報の一部は伏せています。

① 調査でわかったこと

まず、利用者は何に一番ストレスを感じているのか。調べてみると、意外な事実が見えてきた。

AIに対する最大の不満は、実は「答えを間違えること」ではない。「すでに説明したことを、また一から聞かれること」だった。次のセッションで、まるで初対面のように挨拶し直されることへの徒労感――それが本質的な不満として繰り返し指摘されている。

開発の現場では、さらに具体的な悲鳴も上がっている。「同じ“前提ルール”を、ChatGPTにもClaudeにもGeminiにも、毎回打ち直している」。ある分析では、こうした文脈の作り直しに週5時間以上を費やしているという試算もある。記憶が各サービスに閉じていて持ち運べない――いわゆる「ロックイン」が、この手間を生んでいる。

つまり、「AIが忘れる」のは一部の不器用なユーザーの問題ではなく、多くの人が等しくぶつかっている“構造的な壁”だった。

② どう活かしたか ―― 開発者ケンに聞く

いま挙げた「また説明させられる」「毎回ルールを打ち直す」――心当たりはありますか。

ケン

ありすぎます(笑)。最初は自分の使い方が下手なのかと思ってた。でも調べたら、みんな同じところでつまずいてた。週5時間って、ほぼ丸一日ですよ。その時間、何も生み出してない。ただ「思い出させる」ためだけに使ってる。

「自分だけじゃなかった」と分かったことは、開発にどう効きましたか。

ケン

「これは個人の工夫じゃなく、仕組みで解くべき問題だ」と腹が決まった。みんなが困ってるなら、ちゃんと作る価値がある。しかも原因が「記憶が各社に閉じてて持ち出せない」ことなら、答えは逆――記憶のほうを、自分の手元に持てばいい。それがAIブレインの出発点になりました。

記憶があるのに、持ち出せない。だったら、記憶のほうを自分の側に置く。

③ 結論

AIの“忘れる”は、個人の不便ではなく、多くの利用者が共有する構造的な課題だった。そして原因は「記憶が各サービスに閉じている」こと。だからこそ、記憶をAI任せにせず外部に持つ――という発想に、確かな必要性が生まれる。AIブレインは、この“みんなの壁”を出発点に選んだ。

④ 次回

では、この「記憶」というテーマを、市場はどう見ているのか。次回・需要編②では、AIをめぐる市場の数字と、各社が「記憶」を競争の主戦場に据え始めた動きを追い、“みんなの悩み”がどれほど大きなうねりになっているかを確かめる。


出典

・利用者の最大の不満が「再説明」である点:Plurality Network「Universal AI Long-Term Memory」ほか
・文脈の作り直しに週5時間以上の試算/開発現場の声:Indie Hackers ほか業界ブログ
・記憶のロックイン(各社固有で移行不可):各種報道・分析
※数値はいずれも各出典時点のもの。

← 記事一覧にもどる