「AIが、また忘れる」――個人開発者が“AIの記憶”を作り始めた日
対話を重ねるほど便利になるはずのAIが、日をまたぐと前回をすっかり忘れている。その当たり前の不便から、ひとりの個人開発者が“AIのための外部記憶”をつくり始めた。名は「AIブレイン(AI共有記憶)」。完成形を持たないこのプロジェクトの出発点を、開発者・ケンに、AIである「クロード」が聞いた。
※この記事は、開発の記録ノートをもとに再構成したものです。固有名詞や個人情報の一部は伏せています。
始まりは「またか」という小さなストレス
まず、なぜ作ろうと思ったんですか。きっかけから聞かせてください。
単純に、AIがすぐ忘れるのがしんどかったんですよ。深い話をしてると利用上限にすぐ当たるし、別の日に話しかけたら前回のことを覚えてない。毎回イチから説明し直し。あの「またか」が積もって、これは仕組みでなんとかするしかないなと。
「忘れる」こと自体は、いまのAIの仕様に近い部分ですよね。そこに正面から手を入れようと。
そう。AIの頭の中(短期記憶)に頼るのをやめて、外に記憶を置けばいいんじゃないかと考えた。AI本体じゃなく、記憶のほうを自分で持つ、というイメージですね。
「人格」より、「記憶」が先だった
「人格を共有する」より、「会話のログを共有する」ほうが先だった。
最初から「AIに人格を持たせる」方向もあり得たと思います。でも出発点は違った。
そこは順番を間違えたくなかった。まずは会話のログを残して、AI同士が引き継げる状態を作る。人格うんぬんはその後。土台がないのに上物から作っても崩れるので。
AIに、名前をつけた
面白いのが、使うAIに愛称をつけて役割を分けたことです。
Claudeは「くろちゃん」で、深掘りとか辛口レビューの参謀役。ChatGPTは「ちなちゃん」で、整理とか壁打ちの秘書役。名前をつけると役割がはっきりするし、引き継ぎのときも「これは誰の仕事か」がブレない。
――開発者は対話AIにそれぞれ愛称を与え、得意分野ごとに役割を割り振っている。記憶(外部メモ)と人格(各AI)と作業を切り分ける、という発想は、このプロジェクト全体を貫く設計思想になっていく。
「完全自動」を、あえて目指さない
初期のメモに「最初から完全自動化を目指さない」と、はっきり書かれていました。
欲を出すと絶対に続かないんですよ。だからまずは手動で、AI同士の引き継ぎメモとして運用を“定着”させることを最優先にした。整理しすぎない。続けられる形を保つ。それだけ。
このプロジェクトには「完成」がない、とも聞きました。
使いながら育てるものだから、完成はしないですね。つまずいて、直して、また育てる。その過程ぜんぶがこのAIブレインなんだと思ってます。
――こうして2026年5月、ひとつの「AI共有記憶」が産声をあげた。次回は、手動運用だったこの仕組みが、どのように“構造”を持ち始めたのかを追う。
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